想い出の場所で 居酒屋おふくろ

むかし鴫野に住んでいたころ母親がここの商店街で商売をしていました
ブラッと立ち寄ればそのお店があった向かいに居酒屋がありました
商売で忙しい母親のかわりに私の世話をしてくれたのが向かいの老夫婦
お子さんがいらっしゃらなかったので私を子供のように扱ってくれました
母親いわく難しい人で「可愛がってもらったんあんただけや」
確かに妹や近所の子供は毛嫌いしてたのは子供心にもわかっていました

おっちゃんやおばちゃんの膝の上に座りご飯を毎日よばれたのも覚えています
おばちゃんの作った出し巻き玉子はいまでもハッキリと覚えています
50年ほど時間が流れて同じ場所でビールを飲む居心地の悪さ
とてもいいお店です
料理も旨いしテキパキとした対応も心地よく感じました
それゆえにお客さんで溢れかえっています

それでもここでビールを飲む姿をおっちゃんとおばちゃんに見られているような気がしてどうも落ち着きません
たいがい悪ガキだった私もこの場所ではいい子でいたんです
まさか50年たったのちただの呑んだくれになっているなんてお二人に合わす顔もありません
二人の膝の上に座り月光仮面を見たのは一生忘れません